星の尻尾をつかまえて

 

泣くようなことじゃない とか 悲しむことじゃない とか そうやって自分を励まして 好きな物のことを考えて 悲しみを誤魔化すのが上手くなった  そんな風に過ごしていたら わたしだけのものだった星も恐竜も鯨もボイジャーも湖も尻尾も夕暮れの空も祈りの言葉もまっさらな気持ちで信じていたものが悲しみのベールを纏うようになった あなたがくれた言葉もただ今をやり過ごすためだけのものに成り果てた 私は誇り高い最後の恐竜だったのに思い出に支えられて生きていた 人に期待しないとあれほど繰り返してもすぐに忘れてしまうのだ 私たちはみんなひとり 全てが遠く 何も見えない 最後の星が消えるまで夢を見て生きていたかった 

 

 

小指で巻きとって


春の雨 これが本当の春雨なのだ 風が体に巻き付くようで生暖かい 春の足音がする 音楽が体から零れていく 透けてしまう なにもかも

 

「今日から自分が変われるかもしれないって思ったのに。もう死んだみたいに生きなくてもいいって思ったのに」 というセリフが頭を巡回して 全てが狂っているように感じる日々で愛が見えない 優しさを積み重ねてもなんにも残らないとか思っちゃう

 

お姉ちゃんと妹の夢ばかり見る 会いたい人に会えなくてなんのための人生だろう 思い出すだけで涙が出るほど大切な素晴らしい姉とちいさな妹 笑っているかな 眠れているかな 2人が幸せなら私なんてどうでもいいと、心から思う 取るに足らない私の全て あなたたちがとても好きです

 

どうしてだろう 大切な人がいなくなることばかりを考えてどうしようもなく悲しくなるのは いつか会えなくなる日が怖くて仕方がないのは もう誰もいなくならないでと夜になると決まって思うのは

 

 

 

僕らは麦だよ


ゴッホ展に行く。雨降り、気温9度。
チケット売り場に並んでいるとおばあさんに声をかけられる。友人が来れなくなりチケットが余ったので差し上げますとの事、お礼を何度も言い場所がわからないという会場まで共に歩くこと5分。おばあさんは傘を預けていた。いざゴッホ。待望の麦畑へ。

午前中でも想像以上の人集り。怖気付くも、目の前に現れるものたちに必死で目を凝らす。
テオへの手紙、農民たち、馬、植物。
油絵の厚み、それによる輝きと力強さ!

薔薇。当時より色あせてしまったとの記載あり。それでも近づけば匂い立ちそうなほど溢れんばかりの薔薇、薔薇!

何よりも、麦畑。本物の、ゴッホが描いた、ゴッホの目に見えていた、麦畑。信じられなかった。液晶画面で何度も見たあの麦畑が、触れる距離にあった。
麦畑とポピー、黄色い麦から顔を出す赤いポピーの美しさ。
「この一週間はずっと小麦畑の中にいて、太陽にさらされながらとにかく仕事をしたよ」とテオへの手紙。

 

じっと見つめていると涙が出てきそう。サン=レミの療養院の庭。苦しいほどの質量。息もできない圧倒的なボリューム感。ゴッホは不幸ではなかった。絵が売れなくても計り知れない孤独の中でも苦しい悔しい生きる希望もない、でも、きっと不幸ではなかった。そう思えるような絵だった。


「 私は絵を描く夢を見、そして私の夢を描く 」


外に出て傘立てを見るとおばあさんの傘は無くなっていた。

あの花びらのように

わたしはわたしのために強くなりたい だから1つ目標を立てた くじけそうな時に読み返すために日記にします


今までこれといって頑張ったことはなかった 頑張る人たちを見て羨ましいと思っても行動に移すことはなかった  わたしは怖かった 何も出来ない自分を認めるのが あなたは何もできませんと言われるのが 結局ダメだったと思われるのが


わたしはわたしのために強くなりたい 何にも頑張ったことのない自分を蔑むのはもうやめたい 無理かもって思う でも無理じゃなかったって思える日を自分で勝ち取りたい 


何かを始めようと決めたなら明日からは違うわたし 強い味方がくれた言葉を信じたい

 

 

足の先が冷たくなってもあなたが

 

大好きなおじいちゃんとおばあちゃん なのに雨を理由に会いに行くのをやめてしまった おじいちゃんの大きな手とかおばあちゃんの笑った顔とかいつか必ず触れなくなることを思えばこんなに苦しくなるのに

 

お父さんに強く言い過ぎてしまった こういう時いつもお父さんの寂しそうな笑顔を思い出す あの大きな背中でいつも肩車をしてくれたお父さんの みんなが幸せだった頃の記憶を一生懸命引っ張り出しても やっばり思うのはお父さんの計り知れない孤独と絶望 

 

後悔だけは嫌なのだ あの秋の夜もう絶対に誰も失いたくないと思ったあの日に私は決めたのに どんなにどんなに思っても戻ってこない温もりを絶対に後悔で終わらせないと ちゃんと伝えよう あなたがいたから生きてこれた 貰った愛の半分も返せないかもしれないけれど 

 

 

 

 

 

 

どこにいたの ここにいるの

エアコンの効いた室内で働くわたしが炎天下で毎日働くお父さんの事を考えるとき心臓の鼓動が早くなる わたしの大切なおとうさん

実家にしばらく帰っていない 大好きなおじいちゃんやおばあちゃんの事を想うと胸がぎゅっと熱くなる

泣き虫の妹や頑張り屋のお姉ちゃんのこと

 

みんなにもあるのかなわたしにとってのボイジャーや52ヘルツの鯨のような

 

習慣になった眠る前に頭の中で作る遺書 水の中にいるような苦しさで毎日毎日思うこと 祈ったって願ったって何を犠牲にしたってもう二度と会えなくなるよ 触れなくなる 何にもなくなっちゃうこと 体温も匂いもおはようもごめんねも

 

どうかもう誰にも死んだりしないでほしい ずっと生きていてほしいだってわたしはもう誰も失いたくはないから できることをしようって後悔しないようにと決めたのに